斎場御嶽

沖縄では、あの世のことを「グソー(後生)」といいます。かつて琉球王国として独立した一つの国家だった沖縄は、日本とは異なる独特の文化や死生観を持っています。様々な文化や風習にも深く関係するグソーとは?

グソーの世界は海の彼方にある

沖縄の人が考えるあの世の世界は、空の彼方にはありません。四方をすべて海に囲まれている沖縄では、あの世であるグソーの世界は、東の海の彼方にあると考えられています。

なぜ東の海の彼方なのか?

四方を海に囲まれているのに、なぜあえて東の海の彼方になると限定しているかというと、そこには、沖縄の国を作った神さまの存在と深く関係しています。

沖縄の国を作った神さまは、アマミキヨという神様です。アマミキヨは、首里城から見て東の海に浮かぶ島・久高島に、最初に降りたといわれています。そのため、久高島は、「琉球最高の聖地」として、古くから沖縄では信仰の対象となってきました。

その琉球最高の聖地と並び、琉球の人々にとって大切な聖地とされているのが、世界遺産にも登録されている斎場御嶽です。

斎場御嶽は、「琉球本島最高の聖地」と呼ばれ、かつては男子禁制の聖地となっていました。斎場御嶽には、複数の拝所がありますが、中でも「久高島遥拝所」は特別な拝所となっています。この拝所からは、琉球最高の聖地である久高島を見ることが出来るため、国王も久高島巡礼の際には、必ずこの拝所を訪れていたといわれています。

久高島のさらに先にあるのが沖縄のあの世の世界

久高島

沖縄の人々が考えるあの世の世界は、実は、久高島よりもさらに先にあります。どのくらい先にあるかということがわからないほど、沖縄本島からはるか遠くの海にあるといわれています。

実際にあの世の世界を見ることはできませんが、その方角を確認することはできます。

まず、斎場御嶽の久高島遥拝所から、久高島を確認します。久高島を確認したら、久高島遥拝所と久高島を結ぶ線を、そのまま東の方向に向かって延長させます。その延長線上に、沖縄の人々が考えるあの世の世界があるといわれています。

沖縄のグソーはどんなところ?

沖縄のグソーは、沖縄のご先祖様が住む世界といわれており、亡くなると、海を渡って天の国ではなく、グソーの世界で生活するといわれています。

グソーではご先祖様は畑仕事をしている?

沖縄のご先祖様は、亡くなった後も、グソーで様々な仕事をしているといわれています。この考えを裏付けるのが、かつての沖縄のお墓にあります。

沖縄のお墓は、本土のお墓の形と違い、亀甲墓と呼ばれています。一つの大きな家のような形をしており、古いお墓では、一定期間を過ぎた遺骨を、共有の大きな骨壺に納めて安置するという方法がとられていました。

そのお墓の敷地内には、大きな水瓶と小さな畑が作られているものもあります。これは、あの世のご先祖様のための畑と水瓶といわれており、かつては、埋葬の際に墓の畑に米をまいたとも言われています。もちろん、あの世のご先祖様が育てた穀物がこの世で実ってしまっては大変ですから、この場合は、芽が出ないように炒った米を使ったそうです。

納骨の時には島ぞうりをお墓にお供えすることも…

沖縄では、お墓に遺骨を納骨する際、「メージク」と呼ばれるお墓専用の焼香セットを準備する地域があります。「メージク」は「前卓」のことで、香炉のほかにも、ろうそくや花立などがセットになっています。

納骨の際には、メージクと一緒に草履も準備するのですが、海が見える地域では、草履の代わりに島ぞうりを使っていたという地域もあります。海の彼方に旅立つご先祖様のために、島ぞうりを準備したのかもしれませんね。

7代過ぎると神さまになるご先祖様

沖縄のご先祖様は、7代たつと、グソーの世界から、さらに海の彼方にあるニライカナイという場所に渡ります。ニライカナイは、神さまの住む領域といわれおり、ここに渡ったご先祖様は、今度は先祖神(祖霊神)に生まれ変わります。沖縄のご先祖様は、ニライカナイで神様になるまでは、この世と変わらない生活をグソーで過ごしているということなのでしょう。

神様になるまではご先祖様の世界もかなり厳しい

ニライカナイにわたって神さまになるまでは、ご先祖様の世界といえども、かなり厳しい世界のようです。

墓の中では新入りのご先祖様が門番をつとめる

沖縄のお墓は、ご先祖様の遺骨が順番に納められています。一族で共有している門中墓になると、骨壺を納める棚も大きくなり、墓の入り口には、門番を建てるのが決まりです。

この門番は、墓の中のご先祖様の中で最も新入りのご先祖様が務めるのがきまりにあります。ですから、新しい遺骨を納めるときには、ひとつ前に納められたご先祖様を、通常の骨壺を納める棚に移動させます。

お盆の時に墓を開けると門番のご先祖様が喜ぶ?

沖縄のご先祖様は、旧盆になると、子孫の住む家の仏壇に帰っていきます。ところが、門番となったご先祖様は、他のご先祖様が家に帰っている間も、お墓の留守番をしなければならないそうです。

そのため、旧盆の時期に新しい遺骨が納骨されると、「自分の代わりの門番がやってきた」といって、喜ぶご先祖様もいたんだとか…。

ご先祖様がお墓でくつろいでいる時に墓を開けると、頭をたたき割られる?

ご先祖様たちがお墓の中でくつろいでいる時に、不用意にお墓を開けると、中にいるご先祖様たちの逆鱗に触れることがあります。なんでも、怒ったご先祖様が、勝手に中に入ってきた人間の頭を棒で叩き割るのだそうです。

そのため昔は、墓に入る時に、洗面器(どうやら金属製の洗面器の方が人気があったようです)を頭にかぶって、ご先祖様たちから頭をたたき割られるのを防いでいたという地域もあったそうです。

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